2012年7月19日木曜日

甲南大学公開講座レポ/その2


こんにちは、恵美須パープルです。

最近受講した甲南大学の春期公開講座「子どもの才能を伸ばす環境づくり」の備忘録2回目です。
今回は、ロンドンオリンピック女子柔道日本代表のコーチもされているスポーツ科学の先生の講義も加え、運動の発達について印象的だった内容をご紹介します。

《その2 発育・発達を促す運動について》

生まれたばかりの赤ちゃんがする運動は反射運動といい、自らの意思がなくてもするもの。
口に入れたものを吸うとか手をぎゅっと握ることなどが代表的ですが、それらは首が座る生後56か月ごろを境に消失。その後は自らの意思で行う随意運動に変わっていきます。

私たちが日ごろ行っている動き全般が随意運動だと思うのですが、とても簡単にしていることでも実は脳と筋肉が複雑に絡み合っているそうです。
そのプログラムを面倒臭く表現すると(カッコ内はあくまで恵美須パープルの意訳です)
1   意思の発動                   「ボールを蹴るぞ」
2    動作目標の決定            「あそこに置いてあるボールだ」
3    使用筋の選定               「○○筋と●●筋を使うべきだ」
4   タイミングの決定          「走り込んでここで右足を上げて」
5    力の調整                      「左右の足のバランスをうまくとって」
6    運動出力                      「よし、今蹴るぞ」
7    体性感覚                      「蹴って足に当たった~」

こんなに複雑な指令&伝達を、人間は瞬時に行っているのです。そしてこの経験の多さが脳と筋肉との経路を多く作り、結果、「運動神経がいい」人になっていくそうです。運動神経という名の神経はないと聞いてビックリですが、脳と筋肉の間で行われる情報の処理伝達の感度がとてもいい人のことだと思えば納得。運動が脳の発達と直結していることがわかります。
幼児はこのプログラムを懸命に行っている時期ですが、1歳までの乳児期には親からの刺激などで随意運動をさせてあげることが肝心。赤ちゃんマッサージも随意運動を促すにはいいんだとか。

運動というとついスポーツのことかと思ってしまいますが、手先や体を動かすという意味では楽器の演奏も運動です。
楽器の演奏については脳科学的な面からも研究が進み、パフォーマンスの向上に伴って脳の運動野のうちの手指にかかわる領域が拡大していくことがわかっているそうです。ただし、7歳以下で始めた場合と7歳以上で始めた場合には上達に差があるなど、習い始める年齢に臨界期があるとか。昔から習い事は6歳からというのは案外科学的なのかも。
ちなみに、赤ちゃんにモーツアルトを聴かせると発達に効果があるかどうか…の真偽のほどは「確かめられない」そうです。
ブリティッシュロック好きな私は、息子の乳児期にはピンク・フロイドをたくさん聴かせるつもりでしたが(なんか賢くなりそうでしょ)、CDかけると自分が辛気臭くなってしまい全く無理でした(笑)。


さて、本当に体を動かす意味での運動には、基礎となる基本動作が36あって、それを児童期に導入していけば、バランスのいい身体感覚を身につけられるようです。
◆姿勢の変化や安全性を伴う9つの動作→立つ、組む、乗る、逆立ち、渡る、起きる、ぶら下がる、浮く、回る
◆重心の移動を伴う9つの動作→走る、登る、歩く、跳ねる、泳ぐ、垂直に跳ぶ、くぐる、滑る、這う
◆人や物を操作する18の動作→持つ、支える、運ぶ、押す、当てる、掘る、蹴る、押さえる、捕る、振る、こぐ、渡す、投げる、倒す、引く、打つ、つかむ、積む
なかでも組み合う(組む)ことは、相手への思いやりができるので、特におすすめだそうで。…なるほど、柔道の先生の講義ですから説得力ありますね。

特に強調されていたのは、子供、特に幼児の自由遊びの大切さです。幼稚園の放課後をお稽古ごとで埋め尽くすよりも、子供ひとりで好きなように遊ばせる時間をたくさんとるのがいいとのことで、自由遊びが不足すると、不安を抱えて社会にうまく適応できない大人になる懸念があるとまでおっしゃっていました。
わざわざ運動教室なんて行かせなくても、遊びの中で基本動作が身に付いていくのでしょうか。
より専門的に子供にスポーツをさせていく場合のお話は、またの回にご紹介します。